研究活動の要約
「平成の合併」を選択せず、人口減少や高齢化がより顕著に進む京都府内小規模町村は、必要な行政サービスを将来にわたって持続的に提供できるであろうか。もし仮にそれが困難であるとすれば、政府の地方制度調査会答申でも何度となく言及されてきたように、小規模市町村の事務の一部を都道府県が代わりに処理する「垂直的補完」が、京都府においても近い将来、求められる場面が出てくるのであろうか。こうした少し先の未来を見据えた課題について検討するために設置されたのが、京都府と本センターとの協働による「小規模町村に対する都道府県支援調査方法研究会」である。
小規模町村の機能維持は、本来的にはナショナル・ミニマムを保障するという意味で国が果たすべき役割とされてきたし、現在もその理念は保持されるべきものである。しかし、国は交付税財源の不足から保障すべき財源を地方自らが発行する赤字地方債(臨時財政対策債)に振り替えるなど、少なくとも財政上はその役割を十分果たし得ていない。しかしだからといって、即座に都道府県の保管事務が市町村の自治に取って代わることは、地方自治に関わる原理原則からすればありえない(新川2017)。実際、これまでも市町村が単独で事務を処理することが困難な場合、あるいは複数の自治体により共同で事務処理した方がより効率的かつ効果的である場合には、様々な広域連携による「市町村間の水平的な補完」がなされてきた。
京都府でも北部地域でそうした水平的な補完が行われているが、南部地域では後述する状況の違いから、同様の補完には限界があるように思われる。もしそのように府内小規模町村が水平的な補完によってもなお必要なサービスの維持が困難である、あるいは今後困難になると考えられる場合には、補完性の原理に基づいて、京都府による垂直的な補完・支援が求められよう。
本報告書では、「平成の合併」を選択せず、広域連携手法や京都府からの支援を活用している相楽東部3町村(笠置町、和束町、南山城村)を事例として取り上げ、その人口動態と将来ビジョン、財政状況や事務体制について検討し、府による垂直的補完の可能性、今後の研究課題を明らかにしたい。
本報告書の構成は、次の通りである。第1章では、そもそも広域連携とは何かを確認したうえで、市町村による広域連携手法を比較検討し、そうした手法をより積極的に活用するために都道府県にどのような支援が求められるのかを提言する。第2章では、相楽東部3町村が合併を選択しなかった背景を確認したうえで、3町村が行っている広域連携および府による支援状況、さらには地域を支える住民自治や協働の動向を紹介する。第3章では、相楽東部3町村の人口動態と将来ビジョンについて検討したうえで、3町村が他の府内市町村に比べて、財政上どのような位置にあるのか、いかなる将来リスクを抱えているのかを分析する。
採択年 | 2017 |
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対象地域 | 京都府全体 |
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ファイル | 小規模町村に対する都道府県支援手法調査 (PDF, 1 MB) |