【刊行】川勝健志教授編『「水の都」を受け継ぐー愛媛県西条市の地下水利用と「地域公水」の試みー』

  • 株式会社ナカニシヤ出版 192頁
    2022年3月刊行
    定 価 :2,700円+税
    ISBN978-4-7795-1673-3

【概要】

北に瀬戸内海、南に石鎚山を擁し、汲み上げずとも名水が湧き出てくる自噴井「うちぬき」がいたるところにある「水の都」、西条市。「住みたい田舎ベストランキング」の上位に毎年ランクインするそのまちの魅力や水との関わり方、まちづくりを多角的に検討し、地下水を公共のものとみなす地域公水の理念をもとに水との共存を未来へつなぐ方法を考える。

「本書は,地下水利用をめぐる人間の社会経済活動をいかに制御し,持続的な利用を実現するのか,複雑多様化した利害関係者とどのように合意形成を図るのかという問題について,「水の都」として名高い愛媛県西条市のまちづくりを素材に,主に社会科学の立場から迫るという極めてユニークな試みである。」

「西条市が今日,「水の都」として発展してきたのは,豊かな自然環境の中で生まれた地下水が古くから人々によって育まれてきたからに他ならない。(中略)本書では水,とりわけ地下水という貴重な自然の恵みを通じて,そうした“当たり前”の価値を問い直し,その価値が今を生きる私たちの世代はもちろん将来世代にまで受け継がれていくにはどうすればよいのかを問いたい。」(序章「まちを潤す西条の地下水」より)

 

 

【目次】

序章 まちを潤す西条の地下水――“当たり前”の価値を問い直し,未来へつなぐ(川勝健志)
1 本書の問題意識
2 今なぜ西条なのか
3 本書の概要

1章 水循環と地下水資源開発の歴史(中野孝教)
1 はじめに
2 水循環のしくみと西条の地下水
3 地下水開発の歴史
4 地下水の水質問題
5 おわりに

2章 「見えない水」を「見える化」する(高瀬恵次)
1 はじめに――「見えない水」の「見える化」とは
2 西条平野を取り巻く水循環
3 加茂川上流域の水収支
4 西条平野の水収支と地下水
5 モデルの適用結果と西条平野の水収支
6 おわりに

3章 森林と農地の管理を通して地下水を守る(大田伊久雄)
1 はじめに
2 森林と農地がもつ環境機能
3 森林の優れた働き
4 森林を守る政策の重要性
5 西条市の森と農を知る
6 地下水保全対策として森林を適切に管理する

4章 地域公水論と地域地下水利用秩序(小川竹一)
1 「公共物(水)」としての地下水
2 地下水の「私水論」と「公水論」の限界
3 地域公水論
4 「地域地下水利用秩序」形成のための自治体の役割
5 地下水水源利用者の権利義務
6 地域地下水利用秩序と司法判断
7 西条市における新条例制定の必要性

5章 地下水の将来リスクと財政の持続可能性(川勝健志)
1 はじめに
2 西条の地下水問題
3 地下水管理の取り組み
4 西条市財政の持続可能性を診断する
5 おわりに

6章 公共部門と民間部門による協働型地下水保全――西条市地下水利用対策協議会を例に(遠藤崇浩)
1 はじめに
2 地下水利用対策協議会
3 西条市地下水利用対策協議会
4 考  察
5 まとめ

7章 豊富な地下水と住民意識――育水思考の醸成(増原直樹)
1 はじめに
2 水についての住民意識の調査事例
3 西条市の地区別にみた住民意識の特徴
4 中学生,企業担当者と住民の水に対する意識の違い
5 おわりに

終章 持続可能な地下水管理へ――地下水保全協議会の可能性(川勝健志)
1 持続可能な地下水管理になぜ「参加」と「協働」なのか
2 関係者がともに取り組んでいくための場づくり
3 「分水問題」にみる地下水保全協議会の意義
4 今後の課題と展望

コラム:元職員による私史(佐々木和乙)

あとがき(川勝健志)